☎0120-46-3514 10:00~18:00(日曜日・祝日・第1土曜定休)
透析

透析と漢方
透析療法を長く続けると、様々な合併症が現れることがあります。 根本的な解決策が存在せず、透析患者さんの健康、生活の質を低下させる 大きな問題となっています。薬物療法の一つとして漢方薬の投与が有効であった症例があり、漢方療法も試みる価値があります。 また、透析を始めた患者さんは、将来このような合併症を起こさないよう に、透析を開始する時点で漢方薬の服用を始めることも、予防策として有功です。
以下に述べる合併症で苦しんでいる透析患者さんや、これから透析を始める患者さんで、持病として既に合併症関連の病気を持っている方には、漢方薬が威力を発揮してくれることでしょう。
1:体力低下、全身倦怠感
近年、透析の長期化により、微量元素やビタミンを含めた栄養障害が発症 することが問題になっています。栄養障害が心不全や感染症、脳血管障害 の発症に大きく関係していると考えられています。さらに栄養障害(Mulnutrition),炎症(Inflammation),動脈硬化(Atherosclerosis)の悪性サイ クル、「MIA症候群」の透析患者に対しても、漢方の補益剤が自覚症状(食 欲低下、疲労感や消耗感)の改善に有効であったとの症例があります。
2:感染症
透析患者さんは免疫能が低下しており、易感染宿主と考えられています。この場合、重篤で難治性となることが多いのですが、漢方の補気剤が効果を発揮することもあるので試みる価値があります。
3:血圧低下
透析が長くなるにつれ、低血圧となる患者さんが多く、立ち眩みやふらつき、 倦怠感の原因となります。透析条件を見直しても改善が見られない場合には、 昇圧薬を服用すると楽になる場合がありますが、Plasma refiling を促進させる作用をもつ漢方の利水剤が根本的治療薬として有効です。
4:高血圧
透析患者における高血圧の原因としては、塩分、水分の貯留、腎性貧血に対するエリスロポエチン製剤の投与などがあります。降圧剤が処方されますが、体質に合った漢方薬を併用するのもよいでしょう。
5:皮膚症状(全身の痒み)
透析患者における皮膚掻痒症は難治性のものが多く、原因としては腎不全による掻痒誘発物質の蓄積、カルシウム・リンの異所性石灰化などが考えられています。治療抵抗性の皮膚掻痒症を呈する透析患者に対し、漢方薬が有効であった症例があり、試みる価値があります。また、大手町薬局では痒み止め全身スプレーの併用もお勧めしております。
6:貧血
漢方医学的には貧血の症状は「血虚」と考えられます。透析患者のエリスロポエチン抵抗性貧血に対して、気血双補の方剤が有効であったとの報告があります。
7:骨・関節障害
長期間透析を受けている患者の多くは徐々に骨がもろくなったり、関節の痛みに苦しんだりしています。代表的な骨関節病変として、腎性骨異栄養症( ROD)、異所性石灰化、透析アミロイドーシスなどがあげられます。様々な原因が絡み合っており、根本的な治療法は確立していません。薬物療法の一つとして漢方薬が有効であるとの報告があり、試みる価値があります。
8:筋痙攣(こむら返り)
透析中や透析後に有痛性の筋痙攣(こむら返り)を認めることがあります。 漢方による処方では平肝の生薬を筋痙攣出現時の頓服や、予防効果を期待して透析前に服用することも有効です。
9:心不全
もともと心臓の働きの弱い人は、透析中のショック等によって胸苦しさ、息切れ等の心不全の症状が現れることがあります。元気な患者でも、透析時の体重 増加量が多かったり血圧の管理が悪いと、徐々に心機能が低下し、慢性心不全を発病する可能性があります。予防策として食事療法により血圧を管理すること、漢方薬の服用等が有効でしょう。
10:動脈硬化
透析患者では尿毒素、Ca・P代謝異常、体液量の増加等が動脈硬化の促進に影響 しています。動脈硬化が進むと心筋梗塞や脳梗塞の原因となります。予防策の 一つとして、清熱涼血の漢方薬服用が挙げられます。
11:便秘
透析患者ではカリウム制限のために食物繊維が不足がちとなることや飲水制限による腸の粘滑性の低下によって便秘を合併することが多く、このような症例では、潤腸湯などの漢方薬が適応となります。
12:透析アミロイドーシス
長期に透析をしている人では、マイクログロブリンが関節や骨に沈着します。 症状としては、手首にアミロイドが沈着して神経を圧迫し、手の親指から中指 にかけて痛みやしびれが出る毛根管症候群や関節痛、バネ指などがあります。 漢方のキョ風湿剤は、長期服用しても大きな副作用のない沈痛剤として評価でき ます。
13:シャントトラブル予防
シャントトラブルの原因を、漢方医学的にはオ血状態によるもの、と捉えることができます。予防策として、駆オ血剤を服用しておくことが有効であった症例もあります。構成生薬に、末梢血管拡張作用や血小板凝集抑制作用がある為 と考えられます。