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甲状腺疾患(バセドウ病・橋本病)

甲状腺は、のどぼとけの下の辺りにある重さ20gぐらいの内分泌器官(ホルモンを作り出し、血液中に放出する臓器)です。甲状腺から分泌される「甲状腺ホルモン」には、「全身の細胞の新陳代謝を調節・促進する」、「体の熱産生を高める」という重要な働きがあります。いわば“体の元気を出すホルモン”といえます。特に小児期においては、身体や知能の発達に欠かせません。
甲状腺ホルモンの分泌の仕組み
甲状腺ホルモンの分泌は、脳下垂体によってコントロールされています。脳下垂体が甲状腺刺激ホルモンTSHを分泌すると、それが甲状腺に到達して、受け皿となる「TSH受容体」に結合し、その刺激で甲状腺ホルモンが分泌されるのです。さらに、血液中の甲状腺ホルモンが一定量まで増えると、脳下垂体が“もう十分ですよ”と認知してTSHが低下し、甲状腺ホルモンの分泌をストップさせます。この仕組みを「ネガティブ・フィードバック」といい、体内の甲状腺ホルモンは常に一定のレベルに保たれています。ところが、免疫の異常が起こると、こうした甲状腺の働きがうまくいかなくなり、甲状腺ホルモンの分泌が減少したり、過剰になったりします。甲状腺に起こる自己免疫疾患には、「橋本病」と「バセドウ病」があります。
橋本病・・・甲状腺の機能が著しく低下し、血液中の甲状腺ホルモンが減少します。
橋本病は圧倒的に女性に多く、発病率は男性の約15倍にもなります。この病気は、甲状腺の組織の一部を異物とみなし、攻撃するリンパ球や自己抗体ができて、甲状腺の組織が破壊されるものです。
症状は、「甲状腺の腫れ」です。のどの部分に、蝶が羽を広げたような形の腫れが生じるのが特徴です。橋本病の患者さんの約9割は、この甲状腺の腫れ以外の症状は特に起こりません。残りの約1割の人は病気が進行して、いわゆる「甲状腺機能低下症」の症状が見られるようになります。
甲状腺機能低下症が起こると、細胞の新陳代謝を促す甲状腺ホルモンが分泌されなくなるために、「皮膚が乾燥したり、髪のつやが失われる」ようになります。また、体内に水分が溜まって、全身に浮腫が起こり、体重が増加するようにもなります。また、甲状腺の機能低下は、脳の働きにも影響し、物忘れをしたり、うとうとと居眠りをするようにもなります。そのほか、声がしわがれて話しにくくなります。食欲が低下します。便秘になります。月経過多や冷え性、脈が遅くなるなどの症状が現れます。
バセドウ病・・・甲状腺の機能が亢進して、甲状腺ホルモンの分泌が過剰になります。
バセドウ病は、橋本病とは逆に、甲状腺ホルモンが過剰に分泌される病気です。その発病の仕組みは、免疫の異常により、白血球の一つであるBリンパ球から、甲状腺のTSH受容体を異物と認識して刺激する自己抗体が、どんどん産生されることにあります。すると、その刺激を受けて、脳下垂体からの甲状腺刺激ホルモン(TSH)が出ていなくても、甲状腺ホルモンが過剰に分泌されるようになり、体内の甲状腺ホルモンは増える一方となります
症状は、バセドウ病の場合も、「甲状腺の腫れ」を伴います。さらに、いわゆる「甲状腺機能亢進症」の症状も見られるようになります。甲状腺ホルモンは体を元気にするホルモンです。これが過剰に分泌されると、いわば「体が常に全力疾走をしている」状態になります。そのため「じっとしていても、動悸や息切れがして、手足が小刻みに震える」ようになります。また、体の熱産生も高まるため、「汗を多くかき、人によっては微熱」が続きます。さらに、「胃腸の活動も活発」になります。食欲が亢進して、食べてもすぐにおなかがすきます。一方、体のエネルギーの消費が盛んになるため、たくさん食べてもやせてきます。そのほか、神経質になりイライラして不眠になります。下痢、月経不順、無月経などの症状も現れます。また、患者さんの約3割に、眼球が前方に出てくる「眼球突出」が見られます。
甲状腺疾患(バセドウ病・橋本病)の症状
甲状腺疾患(バセドウ病・橋本病)と漢方
橋本病の漢方では、甲状腺機能低下症を自己免疫疾患の一つであり、自己免疫疾患はオ血であるとの考えから駆オ血薬をベースに温熱性の生薬を使用します。バセドウ病の漢方は肝火亢盛型の場合は、苦寒の薬物で肝火を退散させ、津液を滋養し、感情のうっ屈を改善する漢方薬を使用します。また、心陰虚損型の場合は、精神の不安定と陰虚を改善し津液を滋養する漢方薬を使用します。