☎0120-46-3514 10:00~18:00(日曜日・祝日・第1土曜定休)
尋常性乾癬

乾癬は遺伝的素因に様々な環境因子が加わって発症する皮膚病です。近年食生活の変化、特に動物性脂質をとることが多くなるにつれて、この病気が増えています。患者さまを見ると高脂血症、糖尿病、肥満などの疾患をもっている方が多いのですが、中には痩せている方もいます。
乾癬には症状や合併症により全体の90%を占める尋常性乾癬、リウマチ様の関節炎を特長とする関節症性乾癬、無菌性膿疱を多発する膿疱性乾癬、小児に多く、溶連菌感染の後などに直径1cm程度の小型の乾癬病巣が多発する滴状乾癬、他に乾癬性紅皮症などがあります。
銀白色の厚い鱗屑におおわれた紅斑が頭部、髪の毛の生え際や肘頭、膝頭、腰部、背部などの摩擦や刺激を受けやすい部分に多く発生します。痒みは個人差があり、ひどく痒みがある場合、まったく見られない場合、さまざまです。
乾癬の原因はまだ、はっきりとわかっていません。ただ、発症しやすい体質があることと、発症や悪化の引き金になるものがあることがわかっています。発症しやすい体質の人とは、特定のHLA(ひと白血球抗原)をもった人です。HLAは白血球(リンパ球)の血液型ともいうべきもので、それにはいろいろな種類があります。そのなかのCW-6、CW-7と呼ばれるHLAを持った人が発症しやすくそうした体質の人が「風邪をひく、日光に当たりすぎる、発熱する」などが引き金となって、乾癬が発症しやすくなります。
病態は、1つは皮膚の表面近くにある血管が炎症を起こしそのために皮膚の表面に紅斑が生じます。もう1つは表皮の細胞分裂が過度に活発になり、その結果、表皮の角質が厚くなってカサブタのような皮膚片ができます。
治療としては活性型ビタミンD3とステロイドを主体とする外用療法が治療の基本で乾癬治療外用薬活性型ビタミンD3製剤はタカルシトール水和物(ボンアルファR)カルシポトリオール(ドボネックスR)、マキサカルシトール(オキサロールR)が使用されます。ステロイドと活性型ビタミンD3それぞれ単独療法だけでなく、併用する治療方法もあります。
内服療法としては痒みを伴う場合、抗ヒスタミン薬が使用されエピナスチン塩酸塩(アレジオンR)とオロパタジン塩酸塩(アレロックR)が乾癬の痒みに対して処方されます。中~重症の場合は免疫抑制剤のシクロスポリン(ネオーラルR)、ビタミンA誘導体のエトレチナート(チガソンR)が使用されます。
その他、紫外線照射機を使用した光線療法も中~重症の場合行われています。 また、近年生物学的製剤(体の免疫機能にかかわるサイトカインに直接働きかけて過剰に増えないようにする注射の薬)の治療も行われており、日本では2010年よりTNF-α阻害薬インフリキシマブ(レミケードR)とアダリムマブ(ヒュミラR)や抗IL-12(インターロイキン12)/23(インターロイキン23)p40抗体製剤ウステキヌマブ(ステラーラR)などの生物学的製剤が使用されています。
尋常性乾癬の症状
尋常性乾癬と漢方
乾癬は、中国では、銀屑病と称され、一般に衛気営血弁証で血分に熱があると考えられ、血熱を改善する清熱涼血剤がよく使用されます。大手町薬局では、この疾患は患者さまも多く改善例も多数みられます。
(症例)
48歳 男性 171cm 88kg
<服用前>
背中、肘、腹部、脛に銀白色の鱗屑がみられる痒みはないが抗精神剤セレネース、レボトミン、副作用止めの アキネトンや睡眠薬のベゲタミンAを長年服用しているため舌質は暗紫紅色、病院で処方されたステロイド軟膏を 長年塗布しているが効果はない。
<処方、経過>
舌質に典型的なオ血症状が現れていたので駆オ血剤を中心に清熱解毒の黄連解毒湯を配合。 5ケ月服用し痒みがでてきたので去風剤、白鮮皮を加えました。 1年服用し厚みのあった鱗屑も少なくなり痒みもおさまりました。 2年服用後鱗屑もほとんどみられなくなったが、漢方薬の服用をやめると夏場は良くなり冬場悪化します。 服用すると体調も良いので回数を減らして継続服用しています。体重の減量をすすめたが少しずつ増加しています。
(症例)
38歳 男性 175cm 80kg
<服用前>
病院で尋常性乾癬と診断され、副腎皮質ホルモンの外用や痒みがあったため抗ヒスタミン剤の服用、紫外線照射、チガソンの 服用、ビタミンの服用などの治療を受けたがいずれもあまり効果がなくステロイド軟膏のみ使用してます。 皮疹の状態は全身に紅斑と銀白色の鱗屑、痒みがあり点状の出血がみられます。
<処方、経過>
大手町薬局の漢方薬は病名だけでなく皮膚の状態や体質などをみて処方を決めます。体質改善することを中心に組み立てます。 この方は処方のベースは清熱涼血薬になり、熱症が強いので石膏を加えました。また痒みがひどい時は白鮮皮、蝉退を加えます。 ステロイド軟膏を少しづつ減らし漢方薬の服用と生薬軟膏の併用で3カ月目くらいから赤みがとれてきて痒みもおさまってきました。 服用6ケ月くらいで鱗屑も少なくなり、背中の紅斑、点状の出血もおさまってきました。
(症例)
42歳 男性 身長170cm 体重85kg
<服用前>
7年くらい前に尋常性乾癬と診断され血液検査では、中性脂肪とコレステロールが高く、痩せるように言われています。 皮膚は銀白色の厚いふけを伴った暗紅色の紅斑が周りの皮膚より少し盛り上がったような状態で全身に広がっています。 痒みがひどく風呂に入ると特にひどくなります。
今までは顔には出てなったのですが顔が真っ赤になるようになり現在も続いています。 以前はオキサロールとチガソンを使用していましたが今は何もしていません。 かゆみ止めの薬のみ服用しています。
<処方、経過>
もち米を食べると症状が悪化することがあり赤みがひどくなった時には清熱涼血薬が必要です。 生地黄、牡丹皮、連ぎょう、赤芍薬、金銀花、黄連、黄柏、石膏などを組み合わせて使用します。 かゆみ止めとしては苦参、白鮮皮を加えます。
漢方薬服用2カ月で顔の赤みがとれてきました。 同処方で3カ月服用で鱗屑が少なくなり全身の赤みも少しとれてきました。 3年くらい服用でほとんど改善、今は服用を中止しています。
(症例)
64歳 女性
<服用前>
10数年前より頭部に始まり、次第に両腕の肘の外側、腹部、背中、両足のふくらはぎ等に厚い銀白色の鱗屑を乗せた境界が鮮明な皮疹が生じ初めのうちは放置したが頭部のフケがあまりにひどいので病院に行くと尋常性乾癬と診断されステロイド軟膏による治療を始めました。 一時的に症状は軽快するものの塗るのをやめると元に戻ってしまいます。長年使用するとステロイド剤の副作用が気になり温泉療法を勧められ一度は治癒したかにみえましたがそれ以後に効果はなくずっとフケ状の落屑に苦しめられていました。
<処方、経過>
患部の症状と全身の状態から血熱・血オの症と判断し漢方薬と生薬軟膏を処方しました。服用後3週間目くらいから症状が少しひどくなるがステロイド軟膏の急な中止と漢方薬の瞑眩反応と思われます。 ほとんど全身に広がっていた患部が少し減り白っぽく変化してきたが今までなかった痒みが出てきたため去風剤の苦参を加えました。 4か月後皮膚症状は改善し、うっすらとあとがのこる程度になってきました。