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アトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎は、悪くなったり・良くなったりをくり返し、かゆみを伴う湿疹を主な症状とする疾患です。患者さんの多くはアトピー素因を持っているといわれています。アトピー素因とは、気管支喘息、アレルギー性鼻炎・結膜炎、アトピー性皮膚炎の家族歴・既往歴があり、またはIgE抗体をつくりやすい体質を持っていることをいいます。
アトピー性皮膚炎の発症にはアレルギー的要因が深く関わっています。人間の身体には体外から侵入してきた異物を排除し、身体を守る免疫機能が備わっています。この免疫機能がこの五十年余りの急激なライフスタイルの変化に対応できず、今までは反応しないものにまで過剰に反応するようになり、アレルギー(炎症)をおこすようになりました。
その一つは食生活の変化です。元来日本人は、米・味噌・野菜・少量の肉で生活していましたが、冷凍技術や流通機能の整備により、牛乳や卵、肉などの動物性蛋白の摂取が増えたことが関係しています。もう一つは、家屋の密閉性が高くなったために、高温多湿な日本の気候のもとでは、家ダニが繁殖しやすい条件が作りだされました。
どのような物質に対してアレルギーがあるかは、血液検査やパッチテストで原因を調べることができます。アレルゲンには、ダニ、ハウスダスト、カビ、卵、牛乳、大豆などさまざまなものがありますが、アトピー性皮膚炎の患者さんにはダニとハウスダストが関係していると言われています。
また、アトピー性皮膚炎患者さんの多くは、皮膚が角質層の表面を覆う皮脂が不十分で、水分を保持するセラミドなどの角質細胞間脂質が不足しているドライスキン(乾燥肌)の肌質になっています。ドライスキンの状態では、皮膚の水分が逃げやすく、皮膚の細菌に対する抵抗力も弱くなります。
アトピー性皮膚炎患者さんの皮膚には
水分保持能の低下による皮膚の乾燥。
特徴的な皮疹と分布。
角層バリア機能の低下。
痒みを感じやすい。
などの生理学的異常がみられ、これらをもとにして皮膚に炎症をきたすと考えられています。
アトピー性皮膚炎は、慢性に経過することが多いですが、適切な治療により症状がコントロールされた状態が維持されれば、自然寛解も期待される疾患です。乳児から幼少児期に発症したアトピー性皮膚炎は、その大部分が成人期までに自然消退するといわれています。多くの場合、アトピー性皮膚炎が成長と共に皮膚が丈夫になれば治る病気であるともいえます。
アトピー性皮膚炎治療の原則は、正しい診断と重症度の評価に基づいて、原因・悪化因子の対策、スキンケア、薬物療法を適切に行うことです。原因・悪化因子としては、2歳未満では食物、発汗、環境因子、細菌・真菌、13歳以上では環境因子、発汗、細菌・真菌、接触抗原、ストレス、食物などが考えられます。
スキンケアの目的は、水分保持能の低下、痒みの感じやすさの低下、感染しやすい皮膚機能の異常を改善することです。皮膚の清潔を保つためには
汗や汚れは速やかに落とす。
強くこすらない。
石鹸・シャンプーを使用する時は洗浄力の強いもの避け、十分にすすぐ。
痒みを生じる高い温度のお湯を避ける。
入浴後にほてりを感じるような沐浴剤、入浴剤を避ける。
入浴後に適切な外用剤を塗布する、などの注意が必要です。
皮膚を保湿するためには
入浴・シャワー後は必要に応じて保湿剤を使用する。また、室内を清潔にし、適温適湿を保つ。
新しい肌着は使用前に水洗いする。
洗剤は、できれば界面活性剤の含有量の少ないものを使用する。
爪を短く切り、なるべくかかないようにする、などの日常生活の注意も大切です。
薬物療法の第一選択はステロイド外用薬です。ステロイド外用薬は皮疹の重症度、部位を考えてストロンゲスト、ベリーストロング、ストロング、ミディアム、ウイークの5段階から適切なものを選択します。軟膏、クリーム、ローション、ゲルスプレー、テープといった剤型の選択も重要です。
外用療法のもう一つの軸となるタクロリムス軟膏はステロイド外用薬の副作用が出やすい部分に使用します。
外用療法とスキンケアに加え、抗ヒスタミン薬を服用することによりアトピー性皮膚炎のかゆみは抑制され、かいて悪化するのを防ぎます。
アトピー性皮膚炎の症状
アトピー性皮膚炎と漢方
漢方としては、小児期には、体質に基づいて、消化器の機能を整える健脾と健胃の湿熱の除去を考えます。また、陰虚陽盛体質であれば、腎陰虚を改善し内にこもった熱を消退させる清熱滋腎の方剤を使用します。
青年期には、血分に熱がこもっていることが多いので、清熱涼血を中心に体質に合わせて健胃や滋腎薬を配合します。さらに痒みに対しては、去風止痒や皮膚を潤す養血潤燥、浸出液の分泌を抑える清利湿熱の方剤を配合します。
浴剤として①艾葉、桑白皮、黄柏、苦参、生甘草又は②黄柏、苦参、艾葉、生甘草を用います。